専修大学育友会
インドネシアの障害児学校に子ども用車椅子を届ける活動
ネットワーク情報学部4年 戸津 亜里紗
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1.活動を行うに至った経緯と概要

車椅子と私
写真
私は生まれて1年後に難病と言われる脊髄性筋萎縮症(SMAII型)が発症し、その後は車椅子生活を送り続けてきた。私にとって、車椅子は義足や義手と同じように、私の身体の一部である。病気による体型の少しの変化、あるいは年齢による身長体重の変化によっても使用している車椅子は身体に合わなくなり、長時間の使用は困難となる。そのため、子どもの頃は、まだまだ使用可能な車椅子を2年程度で買い換えなければならない。特別仕様の高価な車椅子なのでもったいないと思うが仕方がない。また、毎日車椅子で外出する者にとって、病院にあるような黒一色というデザインを無視したタイプの車椅子にも抵抗がある。

車椅子は私の身体の一部(足の代わり)であると共に、ファッションの一部でもある。そのためには、機能の充実だけでなく、できるだけセンスの良いおしゃれなものであってほしい。そんな車椅子なら、町に出かけても楽しいだろう。最近の日本の車椅子が以前と違って、随分デザインに気を遣うようになってきたのは、メーカーの障害者への理解が少し深まった結果のように思う。しかし、そのような車椅子は値段があまりにも高いという大きな弱点があるのも事実だ。

以上、私の体験から言えることは、まだまだ使用可能でおしゃれな中古の子ども用車椅子が、日本では行き場もなく沢山あまっているはずだということである。親にとっては気持ちの入った自分の子どもの車椅子は、不必要になったとしても粗大ゴミとして捨てる気にはなかなかならない。だからといって、それを保管する置き場にも困るのが現状である。私はアジアの国の障害児たちにそれを利用してもらうのが最善の解決法だと思う。それなら、日本の親たちも喜んで協力してくれるのではないだろうか。次にその理由について述べたい。

私の体験したアジアの車椅子事情
私は車椅子のため、どうしても家にいる時間が多くなる。そのため、父は小さい頃から毎年夏になると、仕事(大学教授でアジア地域研究を専門としている)を調整して、私をアジアの国々に連れて行ってくれた。車椅子で旅した国は、インドネシア、タイ、シンガポール、ベトナム、中国、韓国などで、渡航経験は20回ほどになる。シンガポールを除くと、まだまだこれらの国では車椅子は一般的ではない。特に子ども用の車椅子は珍しいらしく、中国では行く先々で見物人に囲まれて困った経験がある。

他のどの国よりも頻繁に訪れるインドネシアのジャワ島では、車椅子そのものが少ない上、子ども用の小型車椅子は全くないという。例え車椅子があったとしても、小さな障害児たちは身体にまったく合わない大きなサイズのものに乗るしかない。それでは、私のような病気の障害児には全く使用できない。私の車椅子(私は病気のせいで子どもサイズの体型のため、小型の車椅子を使用している)は何処に行っても注目された。そのことを知った私は、小学校高学年のとき、私が使わなくなった車椅子2台を父に頼んでジャワ島中部のジョグジャカルタという古都にある障害児学校に持っていってもらった。その車椅子は2台ともカラフルでおしゃれなものだったので、障害児たちに大喜びされたという。それが、その学校で初めての子ども用車椅子であった。それがきっかけとなって、今までにその学校に30台以上の小型の車椅子が運ばれた。

子ども用車椅子の入手方法
車椅子を入手する手段として、(財)日本社会福祉弘済会内「空飛ぶ車いすを応援する会」に協力をお願いしている。その団体は、不必要となった中古の車椅子を集めてそれを工業高校の高校生たちにボランティアとして修理してもらっている。それを更に、アジア各国に出かける人にボランティアとして運んでもらうという「空飛ぶ車いす」活動を行っている。この団体が車椅子を成田空港まで送ってくれるので、こちらの負担が少なく済んで大変ありがたい。このような協力が既に5年以上続いている。

ただし、私たちとの協力が始まるまでは、現地で子ども用車椅子がそれほどに強いニーズがあるとはわからなかったようである。その点で、こうして関わることができたのは大変よかったと思っている。また、今年に入り子ども用の簡易型の電動車椅子の入手をお願いしていたが、これも初めての経験だったという。電動車椅子は自分の意思で水平移動できるため、それを使えることは障害児にとって革命的な出来事なのだ。それがどれほどの喜びであるかということは、車椅子生活体験者にしかなかなかわからないだろう。アジアでもこれからは電動車椅子が増えていってほしいと思う。私もそのために、少しでも役に立てればと願っている。

なお、今年の3月に私の活動が、現地のジャカルタ新聞に大きく取り上げられたことがきっかけとなって、朝日新聞や毎日新聞の神奈川版や、神奈川新聞でも取り上げられることとなった。その結果、それを読んだ人たちから、自分の子どもの車椅子を使ってほしいという反響が寄せられた。また、神奈川県のガールスカウトOGの会である「コスモスの会」からも寄付の申し入れがあり、電動車椅子のバッテリー等の購入に使わせていただくこととした。このような形で協力の輪が社会的に広がっていけば、嬉しく思う。
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