次に経験したのが今まで勝てなかった相手を乗り越えることでした。私は高校の時は全国大会で3度同じ相手に勝てずに優勝を逃してきました。私はその相手に大学入学してからの初対戦で初めて勝つことができました。東日本の1、2年生のみの大会で、その選手を破って勢いに乗り優勝することができました。1年生の11月頃で、自分がどれだけ成長しているのか不安に思っていた時期でもあったのですが、優勝できたことで大学でも通用すると分かり、思い出深い大会となりました。
それまでの大会では1回戦負けや、2回戦負けばかりで、自分は大学ではまだまだで、きつい練習をしてきたことの意味すら疑問に思っていました。しかし、この大会のおかげで専修大学でのきつい練習がきちんと自分のためになっていると感じることができました。そのことに気づき、よりいっそう日頃の練習を頑張れるようになりましたし、指導してくれたコーチたちにも感謝することができました。
その次に得た経験は高いレベルでの練習、大会に参加できるようになったことです。2年生からは全日本で指揮をとっている佐藤コーチの誘いもあり、全日本合宿に参加することができました。全日本合宿はすべてが新鮮で、参加者も世界で活躍することしか考えていないような人ばかりでした。その頃は北京オリンピックの強化合宿を行っている時で、みんなオリンピックで優勝しようと目標を持っている人たちでした。
世界の最高峰の大会で優勝を狙っている人たちは、やはり練習に打ち込む態度や意欲、雰囲気までも、すべてが違っていました。練習は私が考えていたよりもずっと高いレベルで、いい意味でショックを受けました。私なりに考えながらレスリングをやってきたつもりでしたが、それよりも数段上の意識でやっている人たちがこんなにもいるのか。今まで考えが甘かったと気づかされ、日本のトップ選手との交流に刺激を受けました。
トップ選手は日々の生活でどのようなことを気にしているのか。強くなるためにどのようなことをしているのか、学ぶものがいっぱいありました。世界でトップを狙っていかないと日本で1位にもなれないし、入賞もできない。大学で勝つこともできない。常にトップを狙っていくことで自分の次に目標としていくものが分かる。そしてたとえ世界のトップをとれなくても、そのような過程が自分の自信になり、強みになっていくと分かりました。
合宿を経て全日本大会にも出場できるようになり、実戦の場で日本のトップ選手と試合できるようになりました。全日本で吸収したことを専修大学に持ち帰り日頃の練習に役に立てることもできましたし、自分が持っていたレスリングに対する甘い考えを一から考えさせられる経験になりました。レスリングを一から考えることで、慣れ始めていた大学生活にも気合いが入り、今までよりも充実したものになりました。
次に経験したことは人をまとめることの難しさです。私は3年生の冬からレスリング部のキャプテンを務めることになりました。キャプテンになり、私が思っていたキャプテン像と実際にやっている仕事とのギャップにとても悩みました。やはり大学生になると、やる気、練習態度、目標にしているところも一人一人違うので、みんなで一つのものを目指し頑張っていくことは難しいものだなと分かりました。
しかし、そこでキャプテンを投げ出すことはできないので、みんなを変える前にまずは自分がより良く変わろうと思いました。キャプテンの行動がしっかりしていないと後輩たちからも尊敬されず、ついてきてはくれないと思ったので、まず部員の誰よりも一生懸命に練習することにしました。私がしっかりした練習をしていないと後輩たちを叱れないし、後輩も不満を持つようになってしまうので、今まで以上に練習に打ち込むようになりました。それと同じく生活面でもみんなの模範となるように気をつけました。しかし、それでもまとめ上げることはなかなか難しく、悩む時間が長くなりました。
そうした中で、私をキャプテンとして、人間として成長させてくれた出来事がありました。それは選手とコーチ陣との練習への態度、価値観の違いを原因に、コーチ陣が1カ月の間練習を見てくれない時期があったことです。これは選手たちが一方的に悪かったのでコーチと選手の間に立たされた私としては、とても苦しい立場でした。私が悪くはないのだけれどコーチから怒られ、やる気のない奴はやめさせろと言われ、私は一人もやめさせることなくみんなでやりたいと、その選手を説得したりコーチにお願いをしに行ったりしました。コーチからはなかなか許してもらえず、プレッシャーに感じてキャプテンを辞めようと思ったときもありました。しかし、諦めずにコーチたちが納得してくれるまで謝りに行き、その結果、許していただきました。そのことを
きっかけにチームが一つの方向にまとまり、とてもよいチームになりました。苦しい経験でしたが、チームをまとめるきっかけになったので、とても感謝しています。 |