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専修大学体育会漕艇部 |
日本選手権 優勝までの道のり
我々、体育会漕艇部は石川県小松市において平成18年9月15日(金)〜19日(火)に開催されました平成18年度日本選手権・日本カヌーフラットウォーターレーシング選手権大会に出場し、カヤックフォア−1,000mで優勝を果たすことができました。また、同大会において、カヤックフォア200mでは準優勝、カヤックフォア500mでは3位と好成績を修めることができました。日本選手権での優勝は、実に11年ぶりの快挙でした。しかし、ここに至るまでには、決して平坦な道のりではありませんでした。いくつもの苦悩があり、問題や課題がありました。その度にミーティングを開催し、問題や課題解決に向け部員全員で話し合い、行動し、時には、助け合って乗り越えてきました。
まず初めに漕艇部について説明いたします。漕艇とは名前の通り、艇に乗り人力で漕ぎ進ませる乗り物です。手漕ぎの船は、大きく「カヌー」と「ボート」に分類され、我々が活動している競技はカヌーです。ボートとカヌーの違いは、ボートではオールが艇に取り付けてあるのに対して、カヌーのパドルは固定されていません。またボートは後ろ向きに進みますが、カヌーは全て前向きに進みます。わが国における漕艇競技はボートの歴史が古く、すでに明治時代には始まっていました。カヌー競技はかなり遅れて昭和12(1937)年9月12日に荒川尾久2000mコースで行われた「東京市カヌー協会専修大学対抗カヌー競漕」がカヌー競技の日本で最初のレースといわれております。まさに専修大学漕艇部(カヌー部)を中心にスタートしたことになります。そして幾多の部の存続の危機にさらされながらも、漕艇部は、今年で記念すべき創部70周年を迎えることになりました。
長く古い歴史があると共に歴代の先輩方は数々の輝かしい栄光を築かれてきました。特に輝かしい記録は関東学生カヌー選手権大会で昭和41〜50年まで10連覇を含む12回も総合優勝し、そして全日本学生カヌー選手権大会では昭和13、14、41、43、44、47、48、49年の計8回の総合優勝、東京オリンピックには2名の選手が出場、その他数々の世界大会に多くの先輩方が出場しております。これらの栄光を受け継ぐ平成18年度漕艇部の部員は4年生2人、3年生2人、2年生2人、1年生4人の計10人と極めて少ない人数です。こういった先輩たちが築いた栄光の記録に我々も追いつき追い越そうと日々練習に励んできました。
次にカヌー競技とはどのような競技なのか、練習環境などをふまえて紹介したいと思います。まずカヌー競技といっても色々な種類があり、激流をくだる速さを競うワイルドウォーターレーシング。サッカーやバスケットのようにボールを使って得点を競うカヌーポロ。流れのない湖や川で速さを競うフラットウォーターレーシングなどがあり、我々が活動している競技は最後に紹介したフラットウォーターレーシングです。フラットウォーターレーシングには一人乗り、二人乗り、四人乗りがあり全ての種目に出場できます。高校生は500mと200m、大学生になると距離が長くなり、1,000mと10,000mの速さを、艇を漕いで競い合うものです。
艇を漕いで競争。ただ言葉で言うと単純で簡単そうに聞こえますが、やってみるとなかなか奥が深いです。艇の上では非常にバランスをとるのが難しく、初心者であれば艇の上でバランスを保てるようになるまで最低1年はかかります。バランスを保てるようになれば次は漕ぐ動作です。自らの腕で水を漕いで艇を進ませなくてはならないため非常に体力を消耗します。もちろん艇に乗れるのは前提であって、勝つためにはスピードを追求しなければなりません。そのために必要な体力作り、筋力トレーニングが必要になってきます。フラットウォーターレーシングは日本では、決してメジャーな競技ではありません。
ようやく今年から高校生の全国大会が、全国高等学校体育大会(インターハイ)の正式種目となり、ここ10数年でかなり競技人口が増えてはいるものの、まだまだ発展途上の段階です。しかし、世界的に見るとヨーロッパを中心にフラットウォーターレーシングは普及しており、1936年の第11回ベルリンオリンピックから正式種目となっており古くから競技として成立しているスポーツです。
次に練習場所を紹介したいと思います。練習場所は学校から約20キロ離れた、多摩川で行っています。正直、学校から離れているので移動は不便なのですが、皆毎日時間厳守で練習に参加しています。カヌーのシーズンは夏ですが、練習は1年を通して取り組んでいます。シーズンオフの冬は基礎体力作りを中心とした筋力トレーニングやランニング、シーズンに迫ってくると艇に乗りインターバルなどで大会まで追いこんだ練習を行っています
私達には毎日練習を見てくれる指導者がいないため、学生達で練習メニューを組み立てて試行錯誤しながら練習に取り組んでいます。そこで1つ問題が生じます。それは皆今まで別々の高校で全く異なった環境で、異なった練習方法で取り組んでいたことで、練習に対しての考え方が違うということです。例えばメニュー1つにしてもそれぞれの考え方があり、今までも考えの違いから部員同士何度も衝突してきました。しかしその度にミーティングを開き納得いくまで話し合い解決してきました。今思えば誰一人投げ出さずに問題と前向きにぶつかってきたことが今回の優勝につながったのかも知れません。
先述したとおり、昔は日本を代表するチームでしたが、ここ数年は低迷の時代が続いておりました。そして、今年は記念すべき創部70周年の年です。このような大事な年には容赦なく成績が求められます。我々にはそれが少なからずプレッシャーとなっていました。
「今年はなんとしても優勝する」年始の第1回目のミーティングで皆の目標を統一しました。しかし今までと同じことの繰り返しではだめだということに気づき、まず今までの練習方法、考え方をいったん忘れ、基本からもう一度見直そう一からのスタートが始まりました。
冬のオフシーズン中に徹底したフォーム改善を主将が中心となり全員で取り組みました。相手の良い点、悪い点をとことん言いあいながら徐々によくなって行いくのは実感できました。自分ではわかっているつもりでも相手に言われて初めて気づくこともたくさんありました。そして寒さの厳しい長かった冬も過ぎ去り春が来ました。
いよいよ大会も迫り今までのフォーム改善を活かし、メニューも長距離系からレースに向けての短距離系に変わってきました。練習時間も早朝練習に加え授業終了後も時間を見つけて練習に取り組みました。そうこうしているうちに学校も前期が終了し、とうとう夏本番がやってきました。今年の大会日程は、8月1日〜6日が関東学生カヌー選手権大会。次に8月27〜9月4日か全日本学生カヌー選手権大会。
そして最後に9月12〜19が日本選手権でした。まずシーズン1つめの大会、関東学生カヌー選手権大会が千葉県小見川で開催されました。7月31日までが前期試験であったため、大会の1週間前だというのに思うような練習ができず不安ではありましたが、この大会では今までの練習の成果が発揮されました。リレー、フォア、共に僅差で敗れてしまいましたが準優勝、カヤックペア10,000m準優勝、1,000m3位を含む出場した全種目で入賞を果たし、カヤック部門で準優勝と好成績を残しました。しっかりと手ごたえを感じ取ることができた良い大会でした。僅差での負けと言うこともあり悔しかったのですが、ここでモチベーションを下げるわけには行かず次の目標は全日本学生カヌー選手権大会に向けられました。
関東学生カヌー選手権大会終了後1日半の休暇をとり、悔しさを忘れぬまますぐに強化合宿に入りました。合宿先は神奈川県の相模湖です。関東学生カヌー選手権大会では何が足りなかったのか、次の大会に臨むに当たって各々何が必要とされるのか。それを考えた時、出た結論はペア、フォアのことに関してはもちろんのこと、個人の力。つまり個人の漕力が足りないというものでした。そこで、この合宿では個々の実力の底上げが課題となりました。
しかし、ペア、フォアの練習をこなしながら、個々の実力を上げていくということは、とても困難でしたが、皆『優勝』という目標に向かって妥協せず練習に取り組んだことで、全日本学生までの3週間という短期間の合宿でしたが非常に充実したものになりました。1年生にとっては大学生になって初めての合宿でした。しかも練習に加え、炊事洗濯もこなさなければならないので一番辛い時期だっただろうと思います。この合宿ではさらに体力、精神力、技術力共に向上し、部員同士の信頼もより一層深まり、良い状態で次の大会の準備ができたと思います。
全日本学生カヌー選手権大会は石川県の小松市で開催されました。会場は非常に風が強く、波がありコンディションはあまりよくありませんでした。結果、今大会では、合宿の成果も発揮することができずに不満が残る結果になってしまいした。確実に個々の実力は上がっていたはずなのですが、やはり自然のなかで行う競技なのでその時のコンディションが結果に大きく響いてくる。またどの様な状況でも力を発揮できる様にならなければ勝つことができないと実感させられました。
全日本学生カヌー選手権大会終了後、選抜メンバーが4人決められ、その4人でフォアー(四人乗り)を組み日本選手権に出ることが決定しました。日本選手権も全日本学生カヌー選手権大会同様、石川県の小松市で開催されました。我々4人は漕艇部の代表となり、他のメンバーの分まで頑張ろうと意気込んでいました。会場に入り他の選手の練習風景を見ている内に徐々に緊張感とやる気が高まってきました。今までの練習に耐えてきたことで技術的には他の選手に負けない自身があったので、後は気持で負けない様に心がけました。いざレースになると今までの練習の成果が完璧に発揮することができ、レース展開もイメージしていた通りに運ぶことができました。結果強豪チームを破り見事に優勝を飾ることができました。
ついに夏最後の大会で、今年の目標であった優勝を達成する事ができました。これも皆コツコツと練習を積み重ね、いくつもの壁をのりこえてきた賜物だと思います。この優勝は選抜4人だけの優勝ではなく漕艇部全員で勝ち取った優勝です。そして創部70周年という記念すべき年に優勝を飾ることができて誇りに思います。現在は4年生も引退し、すでに新体制で活動しています。来年も今年のような良い結果を継続して残していけるよう努力していきたいと思います。
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