専修大学育友会
情報処理技術者試験テクニカルエンジニアに合格
―私の資格合格体験記―
ネットワーク情報学部 ネットワーク情報学科 2年 染谷 知臣
独立行政法人情報処理推進機構( IPA )では IT の利活用に当たって、背景として知るべき原理や基礎となる技能についての総合的レベルを測る事のできる試験として情報処理技術者試験を実施している。この試験は「情報処理の促進に関する法律」に基づいて国家試験として行われている。情報処理技術者試験は専門性や分野ごとに 13 の区分に分かれており、 4 月と 10 月に分かれて試験が行われる。情報システム開発・運用者側の入門〜中級レベルに当たる基本情報技術者試験とソフトウェア開発技術者、情報システム利用者側の入門レベルに当たる初級システムアドミニストレータ試験は春と秋の年 2 回行われており、その他の上級の試験は年 1 回の実施となっている。上級になるほど専門性が増し、ソフトウェア開発・アナリスト・監査など、各分野に分かれている。合格率も 10 %未満と厳しい。

私が初めてこのような試験制度があることを知ったのは高校生の頃で、自分の知識がどの程度か試してみたく、基本情報技術者試験をいつかは受験してみようと思っていた。しかし、高校の勉強で四苦八苦していた当時の自分にはそのような余裕は無く、大学に入って受けたいと思うようになった。専修大学のネットワーク情報学部に入学し、コンピュータについての勉強をできる環境になったこともあり、入学当初から 1 年の秋に基本情報技術者試験を受けようと決めていた。

受験対策は 5 月頃から始めた。受験雑誌を購読し、学習スケジュールの参考にした。参考書も 2 冊ほど買い、本格的に勉強を始めた。しかし、私は茨城の実家から大学に通っているため、毎日片道 3 時間弱程かかっており、家に帰ってからの時間自体が少なく、課題をやると疲労のためすぐに寝てしまう生活が続き、スケジュールは思ったように消化できなかった。時々思い出したように参考書を開いてみたが、以前に学習した場所を忘れていて、また同じ場所をやり直すことになり全く進まなかった。大学の行き帰りの電車の中でも参考書を広げて勉強した日もあったが、いつの間にか寝ていることも少なくなく、なかなか進めることはできなかった。それでも毎日参考書を大学に持って行き、空き時間に図書室などで勉強した。ところが、 6 ・ 7 月頃になると大学の授業や試験で忙しくなり全く勉強をしなくなってしまった。

やがて夏休みになると、今までの遅れを取り返すために、必死になって参考書を開き、問題集を解く毎日が続いた。 8 月は出願の時期でもある。情報科学センターで願書をもらい、出願した。受験勉強中にやる気の落ちる日もあったが、そのようなときには情報処理技術者試験受験生の応援サイトをみてやる気を出した。 9 月になると模擬試験を解き始めた。はじめは合格ラインから遠ざかっていた点数も、何度か解く度に点数が合格ラインに近づいていくのが嬉しかった。また、受験票が届くとそれも励みになった。時々受験票を見ては、励みにした。

受験勉強では参考書以外にも大学の授業自体が勉強になるものも少なくなく、コンピュータハードウェアやコンピュータソフトウェア、インターネット入門などの授業で得た知識がそのまま役立った。また、授業中に受験勉強でやった部分が出てくるなど、受験勉強がそのまま授業の予習につながり、一石二鳥の効果を生むこともあった。

試験当日は試験会場が他大学であることや、周りに社会人が多かったこともあり、緊張し、あまり手応えを感じることはできなかった。自己採点の結果、合格ラインに達してはいたが、不安でいっぱいだった。後日合格証が届くと、ようやく合格を実感できたが、私は念願かなったとばかりに燃え尽きた状態だった。

1月に学部から、情報処理技術者試験を受験することが春休みの課題として出された。すでに基本情報処理技術者を取得していた私は、その上級に当たる、ソフトウェア開発技術者を受験することにした。しかし、試験までの期日が迫っており、十分な試験対策をすることもできずに、本番を迎えることになり、結果は不合格であった。そのとき、私は十分に試験対策を立てられずに本番を迎え、不合格になったことに悔しさを感じた。

そこで私は、次の目標を秋に行われるテクニカルエンジニア(ネットワーク)にすることにし、試験対策をすることにした。テクニカルエンジニアという区分はソフトウェア開発技術者の上位の試験に相当し、データベースやネットワークなど、技術ごとに分かれている。その中でもネットワークはネットワーク技術に特化した試験区分である。この試験の合格率は毎年 7 〜 8 %で、狭き門となっている。

テクニカルエンジニア(ネットワーク)試験は午前と午後T、午後Uの 3 つに分かれており、午前はマークシート、午後は記述で、実務を問うため、経験のない自分には不利である。また、午前の基準点を超えないと午後Tが採点されず、午後Tが基準点を満たさないと午後Uが採点されないため、どれか 1 つだけ成績が良いだけでは合格できない仕組みになっている。ネットワークと一言に言っても奥が深く、ネットワークプロトコルに始まり、通信機器の動作メカニズム、物理線の規格、通信規格、関連法規、符号化方式、セキュリティ、障害時の対応、最新技術の仕組みなど広く深く知識を問われる。通信事業者が使用するような技術も問題になる。特に午後の問題ではケーススタディ形式で問われる問題が多く、様々な知識を組み合わせる力も必要となる。

ところで、なぜテクニカルエンジニア(ネットワーク)という区分を選んだのか。私は高校時代に自宅に無線 LAN を構築した経験がある。そのときにネットワーク技術のおもしろさと奥深さを感じた。そのため、この試験によってもっとネットワークに関する知識を増やせるのではないかと思い、受験を決めた。

学習する上で苦労したことは、主に企業レベルで利用される技術についての理解である。イーサネットや無線 LAN 、 IP アドレスなどは自宅でも利用しているため、比較的理解が容易であったが、光ファイバやルーティングプロトコル、 VPN 技術など企業が利用する技術については実際に触れることができないため、理解するのに苦労した。

このような事柄を効率よく学習するためにもスケジュールの作成は不可欠である。しかし、スケジュールを立てるのには苦労した。受験雑誌の特集を参考にしようにも、このレベルになるとそのようなものは見つからない。そのため自分で考えなければならず、スケジュールの立たない時期がしばらく続いた。スケジュールが立ってもやはり、大学の課題が重なって、 6 ・ 7 月頃は全く勉強できない時期が続いた。課題に疲れたときに気分転換に参考書を開いても、前回やったところを忘れていることもしばしばあった。結局、基本情報の時と同じような状態に陥ってしまった。

受験対策は参考書を 1 冊購入し、それを使って勉強をしていた。参考書に付属しているソフトで過去問を解くことができるようになっており、参考書を一通り読んだあとはそのソフトを使って試験対策をすることができた。しかし、一通り終わったのは 8 月の下旬であった。

8月の下旬の時点で持っていた参考書は午前対策のものであったため、午後の対策は問題集を解きながら学習を進めることにし、書店へ急いで問題集を買いに行った。あるサイトの書籍紹介に載っていた 700 ページある問題集を購入し、計画を立てて解き始めた。ところが、ページ数が膨大なうえ、残された期間が僅かなために分からないところは飛ばして解答を見てから考えることが多くなっていた。問題集の合間には過去問題も解いた。もちろん資格試験の勉強だけでなく大学の課題もあったため、非常に忙しい毎日を送った。大学でも問題集と参考書を持ち歩き、空き時間に大学の図書館で勉強をしたことも少なくなかった。時には友達と楽しく喋っていたい気持ちにもなったが、問題集を終わらせるためと思い、気持ちを抑えて図書館へ向かった。このようにして 700 ページの問題集を終えたのは試験日まで 1 週間に迫った日であった。

当日の試験会場は私以外全員が社会人のようで、受験者の平均年齢が 30 代であることを実感した。情報処理技術者試験の受験は 3 回目なので雰囲気には慣れていたが、実務経験者と一緒に受験していると思うと、自然と緊張してくる。午前の試験は私の得意なので得点を稼ぐことができたが、午後の試験は単純に技術だけを問うだけでなく、障害発生時の対処法やシステム設計を行う問題のため、経験のない私は不利であった。しかし、問題集で得た知識を元に精一杯努力し、何とか全ての問題を解くことができた。自宅に帰ってから自己採点したが、午後は解答に精一杯だったため、解答をメモしておらず、正確な採点ができなかった。おそらく惜しい点数で落ちるだろうと自分の中で予想していた。

普段の生活に戻り、 2 ヶ月後の合格発表の日、インターネットの合格者発表の中に自分の番号を見つけたときには本当に足の力が抜けた。まさか自分が合格率 10 %未満の試験に、しかも 1 回で合格できるとは思わなかった。今回の試験では 4 年制大学生は全国で 3 7人しかこの試験に合格しなかった。その中の 1 人になることができて本当に嬉しかった。また、この試験に合格したことで学部長賞をいただくこともでき、二重の喜びとなった。学部長賞を受賞したことで、より自分に自信を持てるようになった。

今振り返ると、春にソフトウェア開発技術者試験に落ちた悔しさがバネとなり、テクニカルエンジニアの合格の原動力になったのかもしれない。もしあのときソフトウェアに合格していたら、今回合格していたかどうか分からない。あのときの悔しさがあったからこそだと私は思う。

私の資格を取る目的とは何か。資格を取得する人の中には就職のためや、成績のためと答える人もいると思う。私は資格を取ることは目的ではないと思う。資格を取る過程で今までに自分の知らなかった知識を得ることができ、さらに知っていたことでも体系的に整理することができるため勉強をしようと思うのである。資格の取得よりもむしろその過程が重要であると考えている。その上で、資格が取得できたらなら、なお一層良いことだと思っている。また、将来その分野で働くことができた時に、仕事の内容が速く飲み込めるようになりたいと思うからでもある。多少なりとも、前提の知識は多いに越したことはない。そのためにも資格の勉強を利用しているつもりである。

今はひと休みの時期にして、今後は秋のセキュリティアドミニストレータ試験を次の目標にしていきたいと思う。ネットワークとセキュリティは切り離せない関係にあるうえ、今後、セキュリティの知識はどの世界でも必要になると思うからである。

また、資格の取得を通して身につけた、努力することや諦めないこと、忍耐力などを忘れずに、今後の生活や就職活動に生かしていきたいと思う。